EU、「共同体」揺らぐ=相次ぐ国境封鎖、協調に苦慮―感染急拡大、「震源地」に

【ブリュッセル時事】急速な感染拡大で新型コロナウイルスの新たな「震源地」となった欧州連合(EU)が域内での政策協調に苦慮している。感染封じ込めのため、独自に国境封鎖に踏み切る国が相次ぎ、「移動の自由」や「単一市場」といった共同体としての土台が大きく揺らいでいる。

◇移動の自由に制限

「対策は近隣国と協調して初めて効果的になる」。フォンデアライエン欧州委員長は繰り返し訴えてきた。ただ、対応は後手に回っている。

欧州では、イタリアで感染者が続出した2月下旬から、周辺国との人の往来が議論の焦点だった。欧州委員会はこの時点で、国境封鎖は「不相応だ」(キリアキデス欧州委員)と判断。出入国審査を撤廃した「シェンゲン協定」維持を各国と確認していた。

その後、イタリアから帰国後に感染が発覚するケースが各国で続発した。伊国内の感染者も急増し、オーストリアは3月10日、伊からの入国の原則禁止を発表した。

ドイツやフランスなどでも感染者が増え始め、チェコやデンマーク、ポーランドも国境管理を導入。独も16日から一部国境を封鎖し、なし崩し的に制限が広がった。

◇マスク確保に懸念

フォンデアライエン氏はこの動きに、物流が寸断されマスクなど医療用品の品切れや治療の遅れにつながる事態を懸念。「最も重要なのは(EUの)域内市場の機能維持だ」と訴えた。

マスクなどの確保をめぐっては、独仏が輸出禁止や国家管理を表明。他国からは「欧州の連帯に反する」(ベルギーのデブロック保健相)と批判が起きた。欧州委の説得で、独仏両国は15日、医療崩壊の危機にひんするイタリアに配慮し輸出規制の緩和に応じたが、足並みの乱れは隠せない。

◇経済対策に不安

経済への打撃も深刻化しつつある。フランスやスペインは14日、生活必需品を扱う以外の店の休業を発表するなど、イタリア以外にも経済活動の大幅自粛に踏み切る国が続出している。今年のユーロ圏成長率は「ゼロを下回る可能性が高い」(EU高官)と不安が漂う。

欧州委は、EU基金を活用し医療や中小企業支援に総額370億ユーロ(約4兆4000億円)を投じる対策を打ち出した。しかし、影響は想定を超える速さで広がっており、どこまで有効打になるかは不透明だ。

EUは単一通貨「ユーロ」導入で通貨統合を進めたが、財政統合や金融危機対応の制度整備はいまだ道半ば。「リーマン・ショック級」とささやかれる今回の危機を乗り切れるか、EUは試練の時を迎えている。

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