少子化対策、充実訴え=医療費負担増は議論低調―自民総裁選

自民党総裁選で、少子化対策の充実が争点の一つに浮上している。人口減少への対応が喫緊の課題となる中、各候補は待機児童の解消や不妊治療への支援などを訴え、出産や子育てをしやすい環境整備に取り組む考えを強調。一方、懸案となっている75歳以上の医療費負担増については、新型コロナウイルス対応が最優先事項となる状況下で、踏み込んだ議論が行われていない。

◇菅氏「不妊治療に保険適用」

厚生労働省の人口動態統計によると、2019年の出生数は86万5234人と、4年連続で過去最少を記録。1899年の統計開始以来初めて、90万人を割り込んだ。また同省が4日に公表した今年4月1日時点の全国の待機児童数は1万2439人と過去最少になったものの、安倍政権が目標に掲げていた20年度末までの待機児童解消は絶望的になっている。

「出産を希望する世帯を広く支援するため、不妊治療への保険適用を実現する」―。菅義偉官房長官は、8日の演説会でこう言明。高額な不妊治療に対し、現在、助成による支援が行われているが、今後1~2年で保険適用に向けた議論を進める意向を示す。待機児童解消についても、保育サービス充実などを通じ「長年の問題に終止符を打つ」とし、現政権の取り組みを継承する考えだ。

これに対し、岸田文雄政調会長は9日の討論会で、「出産費用を思い切って支援し、実質ゼロにする」と表明。現在は出産時の経済負担を軽減するため、健康保険から一時金として原則42万円が支給されるが、大都市などで出産費用の全額を賄えないケースがあることを踏まえたものだ。

石破茂元幹事長は政策集で、待機児童の解消を含め「女性の立場に立って出産、子育てなどを全力で支援する」と主張。同日の討論会では、無痛分娩(ぶんべん)や不妊治療への支援に「力を尽くしていかなければならない」と訴えた。

◇コロナ対応最優先

一方、75歳以上の後期高齢者が医療機関の窓口で支払う負担をめぐり、政府の全世代型社会保障検討会議は昨年末の中間報告で、現行の原則1割から、一定以上の所得がある人は2割に引き上げる方針を明記。具体的な対象者の範囲については、年末までに決める予定だ。

これに関し、菅氏は時事通信のインタビューで「決めたことは進めるのが基本的な方針だ」と現行の方向性を堅持する考えを示した。ただ、その一方で「足元ではコロナで経済もひどくなっている。配慮することは大事だ」とも指摘した。

コロナの影響で医療現場は混乱し、景気の落ち込みが戦後最悪の水準になるなど、今後の経済・社会に暗い影が漂う中、総裁選をめぐる論戦では、国民に負担増を求める医療改革の議論はほとんど見られない。

22年に「団塊の世代」が75歳以上になり始め、予想される医療費急増への対応は急務だが、「今は新型コロナの対応で、社会保障改革の議論以前だ」(政府関係者)との声も漏れる。

時事通信社

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