死ぬ権利、フランスで議論再燃=難病患者「極度の痛み」―「意思尊重を」声多く

【パリ時事】フランスで難病の男性が薬物投与による「積極的な安楽死」の容認をマクロン大統領に求めたが認められず、「死ぬ権利」をめぐる議論が再燃している。仏メディアには「男性の意思を尊重すべきだ」と訴える市民の声が多いが、慎重な議論を呼び掛ける医師らの声もある。

男性は、東部ディジョン在住のアラン・コック氏(57)。仏紙フィガロによれば、23歳の時、血管の壁が徐々に失われる難病であることが分かった。意識ははっきりしているものの、「耐え難い極度の痛み」があり、自宅で治療を受けながら寝たきり生活を送っていた。

現行法では致死薬投与などの「積極的な安楽死」は禁止されている。一方、回復の見込みがなく余命が短い場合にだけ、患者の希望に基づき、鎮痛剤で苦痛を取り除きつつ延命措置を停止する処置は容認されている。

仏メディアによれば、コック氏は「余命が短い」とは判断されず、昏睡(こんすい)状態に陥る強力な鎮痛剤の投与も認められなかった。

コック氏は4日夜、宣言通りに治療や、栄養と水分の補給装置を停止した。「患者に強いられる苦痛を示す」と述べ、絶命までの様子をフェイスブック(FB)で中継する意向を示したが、FBは規約に反するとして、中継を遮断した。

その後、極度の脱水症状に陥り、8日に入院。AFP通信に「もう戦うことができなかった」と述べ、苦痛緩和治療や栄養の補給を再開したことを明らかにした。

インターネット署名サイトでは「コック氏に苦痛のない尊厳ある死を」と題したマクロン大統領宛ての嘆願書が作成された。これまでに3万人以上が署名するなど、国内ではコック氏に賛同する声が多い。

一方、緩和ケア専門の医師は仏テレビに対し、「積極的な安楽死」を禁止する法律について、「特殊な状況が発生する可能性を考慮すれば理解できる」と指摘。合法化については慎重に議論すべきだと主張した。

フランスでは昨年7月、交通事故で約10年間植物状態だった元看護師の男性=当時(42)=が、破棄院(最高裁)の決定に基づく延命措置停止の後に死亡した。男性が延命を拒んでいたとして措置の停止を希望した妻と、「植物状態ではない」として継続を求めた母親との間で5年以上続いた法廷闘争は、「死ぬ権利」に対する世論を二分した。

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