ブラジル軍が先住民支援=民間療法が障害に―アマゾン同行取材・新型コロナ

新型コロナウイルスの累計感染者数が世界で3番目に多く、新規感染者が今も1日5万人規模の南米ブラジル。欧州などから持ち込まれる感染症に免疫を持たず、壊滅的打撃を受けてきた歴史がある先住民への対策は急務だ。政府はその居住地への支援を活発化。ペルー、コロンビアと三角国境を成すアマゾン最深部アマゾナス州タバチンガ一帯で昨年12月、国防省と保健省が共同実施した作戦に記者が同行した。

◇「最良の医療」

日本の本州ほどの面積の熱帯雨林に、チクナ族など先住民約7万人が暮らすアマゾン川上流のアウトソリモンエス地区。軍は12月7~14日に医療専門家27人と医療物資3トンを投入し、4集落で約1700人を診察した。

集落カンポアレグリでは、先住民が軍用ヘリコプター2機で降り立った一行に歓迎の舞を披露。臨時診療所の学校に長蛇の列をつくった。軍医らは新型コロナだけでなく、他の病気やけがの治療、健康相談、犬の予防接種まで広範な医療サービスを提供。集落ではこれまで39人が感染して2人が死亡しており、族長ルシアナ・マルケスさん(40)は「われわれを気に掛けて助けてくれるパートナーがいるのは心強い」と目を細めた。

152人が感染して1人が死亡したという集落ウマリアスIIも状況は同じだ。拠点となった先住民保健当局の診療所は人で鈴なり。軍医らは足の弱い高齢者の往診にも走った。学生ワルテル・ダシウバさん(23)は「たくさんのお年寄りや子供がいるが、ここに来さえすれば最良の医療が受けられる。これまでは忘れられた土地だった」と感謝を口にした。

◇根強い薬草信仰

ただ、買い出しなどで街に出た人を通じてウイルスが流入した当初、恐怖でパニックに陥る先住民を落ち着かせたのは、政府が提供した医療物資でも医師でもなかった。

「皆、薬草で治ると信じて病院に行こうとしなかった。ジャンブー(キバナオランダセンニチ)の根やニンニクなどを煎じたりするのが効くと信じており、来院を説得するのが大変だった」。ウマリアスIIの保健当局職員はこう振り返る。族長ウエグナさん(52)の号令で「新型コロナに効く」とされた薬草が路上でたかれ、集落は毎夕白煙に包まれたという。

自身も感染したウエグナさんは、医師派遣を高く評価しながらも「私はジャンブーやチコリの葉のお茶で治った。自家製薬のおかげで村の死者は最小限に収まった」と主張。カンポアレグリの族長マルケスさんも「病院が処方する薬ではなく、自家製薬で皆が助かった」と繰り返した。

薬草の効果は証明されていないが、軍医ジョマル・デソウザ中尉(37)は「正面切って衝突しない方がいい。薬草茶を飲むのもいいが、悪化すれば医学を試すのも価値があると説得すべきだ」と話す。先住民の民間療法への「信仰」は根強く、間もなく優先的に開始予定のワクチン接種の障害となる可能性もありそうだ。

時事通信社

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