厚生労働省は24日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新薬「メコバラミン」の製造販売を承認した。発症後1年以内の患者を対象とした医師主導の臨床試験(治験)では、既存薬を大きく上回る500日以上の生存期間の延長を確認。国内3例目の治療薬となり、患者らの期待が高まっている。
ALSは、全身の筋肉が徐々に動かなくなる神経難病。国内に約1万人の患者がいるとされ、症状が進行すると自力で呼吸できなくなり、人工呼吸器が必要になる。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた創薬の研究開発が進むが、根本的な治療法は確立されていない。
メコバラミンはビタミンB12の一種で、末梢(まっしょう)神経障害などの治療薬として販売。製薬大手エーザイが治験を実施し一定の効果を認めたことから、2015年に治療薬の承認を申請した。ただ、追加試験が必要とされ申請を取り下げたため、徳島大などの研究チームが医師主導で治験を実施していた。
治験は発症後1年以内の患者を対象に全国25施設で実施。4カ月早くメコバラミンを投与したグループと4カ月遅れて始めたグループを比較したところ、早期投与群では500日以上の生存期間の延長が確認された。平均余命を約90日延長する治療薬「リルゾール」の効果を大きく上回り、今月18日に会見した研究チームの梶龍兒・徳島大特任教授は「非常に驚いている。既存薬を投与した群では相乗効果も確認され、有力な薬が積み重なることで病気の進行を止められるのではないか」と話した。
エーザイは今年1月に再申請を行い、厚労省専門部会が8月下旬に承認を了承していた。研究チームによると、生存期間の延長は申請後の解析で判明したという。会見に同席したALS患者の三保浩一郎さん(57)は「新たな進行抑制薬の登場に患者は大いに期待している。治療可能な病気になることを信じている」と述べていた。
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