油断できない中性脂肪-動脈硬化のサイン -2005年1月1日掲載-

動脈硬化の原因としては、コレステロールがよく知られていますが、実は、血液中の「中性脂肪」も動脈硬化に深くかかわっていることが、近年の研究で明らかになってきました。

中性脂肪とは?

血液中には、色々な種類の脂質が含まれています。健康診断などで、よく耳にする「コレステロール」や、「中性脂肪」もその1つです。コレステロールは細胞の膜やホルモンなどの材料になるものです。これに対し中性脂肪は、体を動かすエネルギー源になります。

中性脂肪は、食べ物に含まれる脂質をもとに、小腸で作られるほか、肝臓でも、脂質や糖質などから合成されます。そして、血液に入って全身をめぐり、エネルギー源として、使用されます。また、全身の脂肪細胞に蓄えられ、必要に応じてエネルギーに変えられます。

コレステロールや中性脂肪はほとんどが水分である血液に溶け込むことができません。そのため、特殊なたんぱく質と結合した「リポたんぱく」という形で、血液中に存在しています。

なぜ多くなる?

健康診断などで、「中性脂肪が高い」と言われることがあります。これは、血液中の中性脂肪が多い状態を意味しています。中性脂肪が多くなる原因としては、次のようなことがあげられます。

体質

ごくまれですが、体質的に中性脂肪を分解する酵素が少ない人がいます。

ステロイド薬を内服していると、肝臓での中性脂肪の合成が促進されます。

病気

糖尿病や肥満の人、腎不全で人口透析をしている患者さんは、中性脂肪が高くなることがわかっています。

生活習慣

食べ過ぎで、過剰なエネルギーが体内に入ってきたり、運動不足でエネルギーの消費が少ないと、それだけ血液中の中性脂肪が多くなります。お酒の飲みすぎも原因になります。

これらのうち最も多いのは、生活習慣を原因とするタイプです。

中性脂肪が多いと・・・

動脈硬化のサイン
血液中のコレステロール、あるいは中性脂肪が多すぎる状態を「高脂血症」といいます。中性脂肪の場合150mg/dl以上が高脂血症と診断されます。コレステロール値が高いと動脈硬化が促進され、狭心症や心筋梗塞などの「冠動脈疾患」や脳梗塞などにつながることは、一般にも知られてきています。しかし、中性脂肪値が高い場合にも動脈硬化が進むことが、最近の研究で明らかになってきました。

動脈硬化のしくみ

主にコレステロールを運ぶリポたんぱくに、「LDL」と「HDL」があります。「LDL」は悪玉と呼ばれ、血液中にその量が多くなりすぎると、血管壁に入り込んで、酸化され、沈着してきます。すると、白血球の一種である「マクロファージ」という細胞が、酸化したLDLを取り込んで、ドロドロした塊を形成します。このため、血管壁が厚くなり、血管の内腔は狭くなります。これが、「動脈硬化」です。

中性脂肪と動脈硬化

中性脂肪は、コレステロールのように、血管壁に沈着するわけではありません。しかし、血液中の中性脂肪が多いと、通常のLDLより小さなLDLがたくさん出現します。また、リポたんぱくが分解される過程でできる「レムナント」とという老廃物も増えます。小さなLDLやレムナントは、血管壁に沈着しやすく、動脈硬化を促します。さらに、中性脂肪が多いと、‘善玉’と呼ばれるHDLが減少します。HDLは、血管壁にたまったコレステロールを回収する役目があるため、少なくなるとコレステロールの沈着が加速し、動脈硬化が進んでしまいます。中性脂肪が高いことは、このような動脈硬化を起こしやすい状態の「サイン」になるのです。

中性脂肪以外の危険因子もチェック

動脈硬化の危険因子には、中性脂肪以外に、血糖や血圧などがあります。危険因子の数が多いほど、動脈硬化、そして冠動脈疾患のリスクは高くなります。早くから原因となる生活習慣を改善し、コントロールすることが大切です。
NHK「きょうの健康」 2004年4月号 NHK出版

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