熱中症について -2005年7月1日掲載-

憂鬱な梅雨の季節も過ぎ、いよいよ夏本番。楽しいイベントを控えている方も多いのではないでしょうか。しかしこの時期、「熱中症」で病院に運ばれる方のニュースをテレビや新聞で見る機会が増えます。熱中症はスポーツ活動中や高温環境での労働など比較的若い世代に起こると思われがちですが、高齢者でも例外ではありません。今回は、夏に多い熱中症についてのお話です。

熱中症とは

熱中症
「熱に中(あた)る」という意味で熱中症と呼ばれています。熱中症とは暑い環境下や運動などで体内にたくさんの熱が発生し、それをコントロールできなくなって起こるさまざまな体調不良のことです。人間の体は、暑いところでは汗をかいて体の熱を逃がし体温調節していますが、体内の水分や塩分が不足するとこの機能のバランスが崩れ、さまざまな症状を起こします。

熱中症の症状と手当

熱中症は軽症、中等症、重症の3段階に分けられます。

熱中症の軽症では「熱けいれん」「熱失神」といった症状が起こります。「熱けいれん」は大量の汗をかいたあと、水分だけを補給し電解質が不足すると起こり、足や腹の筋肉がけいれんして痛みます。「熱失神」は数秒間の失神で、発汗による脱水で血液量が減り、脳に十分血液が送られないために起こります。この段階でスポーツ飲料などで水分をとり涼しい場所で休養すれば熱中症は予防できますが、我慢したりすると中等症に進んでしまいます。

中等症では「熱疲労」という症状を呈します。めまい、疲労感、頭痛、失神、吐気などの症状がありすぐに、水分と塩分の補給が必要です。

重症では「熱射病」の症状として意識がはっきりしなかったり、汗が止まって体が熱くなります。体を冷やしながら一刻も早く病院に運んでください。

熱中症の予防

熱中症にならないためには次のようなことに気をつけてください。

服装は吸湿性・通気性のよい素材で、熱を吸収しにくい白っぽいものを選ぶとよいでしょう。また外出時には帽子や日傘で直射日光を避けてください。自分の体力を過信して、炎天下や暑い場所で長時間の作業やスポーツをすることは避けましょう。また、こまめに水分・塩分をとりながら、適度に休憩をとるようにしてください。特に、高齢の方や肥満の方、暑さに弱い方などは熱中症になりやすいので注意してください。そして、口の渇き・頭痛や吐気・めまい・皮膚の乾燥・体温上昇・倦怠感・目がくぼむ・尿が減るなどの脱水症状を見逃さないようにしてください。

梅雨あけの夏の始めは要注意

人間の体は気温が上昇したり、運動で体温が上がると、汗をかいて体温を調節するようにできています。しかし、暑さに体が慣れるまでは塩分の多い汗をかいて体温を下げるため、水分と塩分が失われて脱水状態となり、熱中症になりやすくなります。そのため、熱中症は、体が暑さに慣れていない梅雨の合間の暑い日や梅雨あけの夏の始めによく起こります。

急に暑くなった日は要注意です。

高齢者の熱中症

高齢者の方は、体温調節機能が低下してきており、のどの渇きも感じにくくなっているので普段から水分が不足しがちです。さらに、慢性疾患などで治療を受けて、お薬をのんでいることも多いため注意が必要です。特に抗パーキンソン剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤などを服用している場合には発汗機能が低下しているので注意してください。

高齢者の方が熱中症を予防するためには、窓を開けたり、クーラーを使うことを我慢しないことが重要です。汗をかくような状況では、のどの渇きを感じる前にこまめに水分補給し、熱中症の前触れとして起こることが多い「こむら返り」や「立ちくらみ」を見逃さないようにしてください。

上手な水分のとり方

汗をかくと水分だけでなく塩分も失われていきます。したがって、水分を補給する際には水だけでなく塩分も同時にとる必要があります。真水より水に少しの塩分と糖分を加えた飲み物は水分の吸収もよく、塩分の補給もできるので好都合です。スポーツド飲料はこうした考えに基づいて作られています。市販のスポーツ飲料はやや甘すぎるので、これに水を加えて薄めてのむとよいと思います。また、あまり汗をかいていないのにスポーツ飲料を多飲すると、血圧が高くなることがあるので注意してください。

ビールは、飲んだビールの1.5倍以上が尿とともに排泄されるので水分補給にはなりません。「うまいビールを飲む」ために水分を我慢するのはやめましょう。