こどもの主な感染症 -2006年11月1日掲載-

私たちの身の回りにはさまざまな微生物が住んでいて、そのすべてが子孫を残そう、仲間を増やそうと活動しています。食べ物に付いた微生物が増殖することを腐敗と言いますが、人の体のなかで増殖することを”感染”といい、いろいろな疾病を引き起こすことがあります。本来、人は微生物に対して防御する力(抵抗力)をもっていますが、病気を起こそうとする力(病原性=毒力と菌量) がそれよりも強くなると、病気になってしまいます。これが感染症です。

こどもは大人に比べて体力がなく、免疫力も十分には発達していません。そのため急に発病し、病状の進行経過も早いことが多いので十分注意が必要です。こどもの感染症の主なものについてご説明します。

突発性発疹

3~4日続く高熱と下痢と、同時に現れる発疹を特徴とする良性の急性ウイルス感染症です。

年齢は2才未満、特に1才未満(5~8ヶ月に最も多い)に多い疾患です。

ヒトヘルペスウイルスによって起こる。潜伏期間は1~2週間。

  • ちょうどお母さんから貰った免疫力が少なくなる時期に多く、生まれて初めての発熱でビックリさせられます。高い熱が3~4日続き、熱が下がると発疹がでます。
  • 感染経路は確定されていませんが、親子間の唾液を介しての感染が考えられます。
  • ヒトヘルペスウイルスは病気が治って抗体ができた後も体の中に残っています。はしかのウイルスは病気が終わると死滅し、体の中には残りませんが、ヘルペスウイルスは残留します。
  • 発疹以外の症状は下痢・不機嫌・嘔吐・食欲不振・熱性けいれんなどがあります。

麻疹(はしか)

全身に赤い発疹が出る病気で、合併症が心配されます。1才過ぎたら予防接種を受けましょう。かつては誰もがかかる疾患で、小児期の急性ウイルス感染症として代表的なものです。

麻疹ウイルスによって起こる。潜伏期間は10~12日間。

  • 風邪症状で始まり、2~3日後、熱はいったん下がり再び熱が上がるとともに赤い発疹が出ます。かゆみを伴うこともあります。口の中に周囲が赤い白い白斑点(コプリック斑)ができ、充血・目やに・鼻汁の症状が出ます。
  • はしかは体力の消耗が激しく、中耳炎・気管支炎・肺炎・脳炎の合併症も発症することがあります。こどもにはつらい病気です。
  • 予防が第一で、1才過ぎたらなるべく早めに予防接種を受けましょう。近年、予防接種をしていても抗体価が下がってしまい、感染する大人が増えてきているので要注意です!

風疹(三日はしか)

こどもにとっては軽い病気ですが、妊婦が感染すると心配なこともあるので、予防接種を受けておくことが大切です。

風疹ウイルスの飛沫感染によって起こる。潜伏期間は2~3週間。

  • 軽い発熱と同時に多少かゆみのあるはしかに似た発疹が出て、咳や鼻水、耳の前後や首のリンパ節が腫れるのが特徴です。喉や目が赤くなることもあります。
  • 三日はしかと呼ばれるように症状は3~4日で消えます。
  • 妊娠初期に感染すると胎児に影響することもあるので、それまでに予防接種を受けておきましょう。

水痘(水ぼうそう)

かゆみの強い水痘が全身に出る発疹性の感染力の強い病気です。予防接種を受けるか、かかったときは治療薬で乗り切りましょう。1才過ぎると任意で予防接種が受けられます。

水痘帯状疱疹ウイルスによって起こる。潜伏期間は2~3週間。

  • 水痘は一度かかると免疫が出来てその後はかかりませんが、将来、帯状疱疹を発症する可能性はあります。
  • かゆみを伴った水疱が頭の中から陰部まで全身に出て広がります。発疹は水疱→膿疱→かさぶた(黒褐色)となり、5~10日ほどで治ります。
  • 抗ウイルス剤を使うと3~4日で済み、かゆみもあまりひどくならずに済みます。但し、ウイルスを完全に消えるまで飲まないと、残ったウイルスが体内に潜伏してしまい、数十年後に活性化して帯状疱疹を起こすことがあります。発疹がすべてかさぶたになるまで(通常5日間)、きちんと薬を服用してください。

伝染性紅斑(りんご病)

ほっぺが赤くなり、腕・太ももにはレース状の発疹が出ます。

ヒトパルボウイルスによって起こる。潜伏期間は1~2週間。

  • 両側のほほに小さい赤い発疹が集まってでき、りんごのように見えます。
  • 最初は軽い発熱や喉の痛み、だるさなど風邪のような症状が見られますが、実はこの頃がウイルスをばらまく危険な時期です。その後、紅斑が出て、ほほが真っ赤になった時には、ほかの人に感染させてしまう事はありません。
  • 本来は軽い病気ですが、妊娠中や血液疾患の人は感染に要注意です!重症化することがあります!

流行性耳下腺炎(おたふく風邪)

こどもの主な感染症
耳の下が腫れる症状が特徴的な病気で、合併症にも注意が必要です。予防接種を受けましょう!感染しても症状が現れない不顕性感染がよくあります。

ムンプスウイルスに飛沫感染して起こる。潜伏期間は2~3週間。

  • 集団生活の始まる春に多く発症します。
  • 耳下腺が腫れ、おたふく顔になるのが特徴です。ムンプスウイルスは膵臓や神経組織にも症状を起こすので、髄膜炎・脳炎・膵炎や難聴、卵巣炎や睾丸炎などの合併症を起こすことがあります。
  • 繰り返し耳下腺の腫れる「反復性耳下腺炎」など耳下腺が腫れる病気は他にもあります。耳下腺の腫れだけで「流行性耳下腺炎」とは判断できません。
  • おたふく風邪かどうか、血液検査で正確にわかります。

伝染性膿痂疹(とびひ)

患部に細菌が感染し、ジュクジュクが体中に広がります。飛び火しないように素早い消火が肝心です!

黄色ブドウ球菌が原因で、皮膚に感染して起こる。

  • 細菌から出る毒素により皮膚が薄く剥がれるようになります。
  • とびひは湿疹、あせも、虫刺され、切り傷、すり傷などがきっかけとなり、患部に感染して、あっという間に全身に広がります。
  • とびひは広がりやすいので、早めに受診しましょう。患部を消毒して抗菌剤で治療します。

伝染性軟属腫(水いぼ)

皮膚と同じ色の真ん中のへこんだ丘疹が多数できます。非常に感染力が強く、接触によって伝染します。

伝染性軟属腫ウイルス(ポックスウイルス)に感染して起こる。

  • 薄着で肌が接触しやすく、プールや水遊びなど感染の機会の多い夏に流行します。
  • 痒いために引っ掻くなどしていぼが破れると、ウイルスが飛び散って全身に広がってしまいます。
  • 丘疹を特殊なピンセットで1つ1つ取っていきます。このため早めに治療する方がこどもにとって負担が少なくてすみます。
  • 何度か感染して免疫ができると次第に発症しなくなります。

溶血性連鎖球菌感染症(溶連菌感染症)

高熱が出て、喉が激しく痛みます。抗生剤をしっかり飲み切りましょう!季節は10~3月が多いですが、初夏にも流行します。年齢は2~10才(特に4~6才)で多く発症します。

溶連菌の飛沫感染(つば・鼻水等)によって起こる。潜伏期間は2~3日。

  • 高い熱、喉の痛み、いちご舌、かゆみのある赤く細かい発疹が特徴です。熱が下がると、皮膚がポロポロはがれ落ちます。
  • 抗生剤ですぐに治りますが、必ず飲み切って下さい!その後、尿検査を受けると安心です。
  • 昔は全身に発疹の出る重いものは’猩紅熱’と言われ、死亡率が高い病気と恐れられていました。
  • 免疫がつきにくく、溶連菌の種類はたくさんあるため、何回もかかることがあります。