最近のワクチンの話題 -2012年9月29日掲載-

ワクチンは新たに認可されて接種が開始されたり、効果を検討し直して接種スケジュールが見直されたりすることがあります。最近接種が開始されたものやスケジュールが変更になったワクチンについていくつかご紹介します。

ポリオ(急性灰白髄炎)

ポリオとはポリオウィルスが口から入り咽頭や小腸の粘膜で増えることによって感染します。増えたポリオウィルスは再び便の中に排泄され、この便を介してさらに他の人に感染します。ポリオウィルスに感染しても多くの場合は明らかな症状は現れずに免疫ができますが、まれに腸管に入ったウィルスが脊髄に入り込み、主に手や足に麻痺が現れその麻痺が一生残ってしまうことがあります。

1960年には日本のポリオ患者が5000人を超える大流行となりましたが、生ポリオワクチンの導入により激減し、1980年の1例を最後に現在では野生株による新たな患者は出ていません。しかし海外では依然ポリオが流行している地域があり日本で流行を起こさないためにもワクチンを接種する必要があります。

生ワクチンでは強い免疫ができますが、ごくまれにポリオにかかった時と同じ症状が出る副反応があることから問題になっていました。そのためウィルスを不活化し、この副反応が出ないようにした不活化ポリオワクチンが導入され、2012年9月より定期接種が開始されています。11月には不活化ポリオワクチンを含む4種混合ワクチンも導入が予定されています。生後3ヶ月を過ぎたら早めに接種しましょう。

日本脳炎


日本脳炎とは日本脳炎ウィルスを持ったコガタアカイエカなどの蚊に刺されることによって感染する病気です。症状が現れずに経過する場合がほとんどですが、症状が出る場合には潜伏期間の後に頭痛、嘔吐などで発症し、意識障害や脳の障害などが起こることがあります。脳炎を発症した場合には20-40%が死に至るといわれています。ここ数年でも九州、沖縄、中国、四国地方を中心に年に10名以下ですが発生が報告されていますのでワクチンの接種が必要です。

数年前まではマウスの脳を使って製造したワクチンを使用していましたが、重篤なADEM(急性散在性脳脊髄炎)の副反応が報告されたためワクチンの定期接種の積極的勧奨が差し控えられていました。2009年にアフリカミドリザル腎臓由来株化細胞を使って製造した新しいワクチンが供給開始され、最近では積極的な接種勧奨が再開されています。対象の年齢のお子さんや、定期接種が差し控えられていて接種していなかった方は早めに受けて下さい。

水ぼうそう(水痘)

水ぼうそうは水痘・帯状疱疹ウィルスの感染によって起こる病気です。任意接種で自己負担があるため接種率が低く、日本では毎年約100万人が発症しているとされています。発熱や発疹、水疱などの症状のみで軽く済む場合がほとんどですが、毎年2-3千人が重症化し死亡することもありますのでワクチン接種が重要です。

また、主に大人になってから発症する帯状疱疹は、水痘感染後のウィルスが体内に残っていて、何らかの原因で免疫が低下した時にこのウィルスが再度活性化することによって発症します。子供への水痘ワクチン接種はこの帯状疱疹の発症リスクを下げることにもつながると考えられており、日本を始め米国や欧米などでは大人の帯状疱疹の予防に水痘ワクチンが使われています。

子供への水痘ワクチンは1回の接種では効果があまり高くなく、2回接種により有効率が著名に高くなるブースター効果が確認されていることから2回接種が推奨されています。2012年の日本小児科学会の予防接種スケジュールでは2回目の水痘ワクチンの推奨接種期間が「5歳以上7歳未満」から「18ヶ月以上2歳未満」に変更されていますので、早めの接種をご検討下さい。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)

おたふくかぜはムンプスウィルスによって起こる感染症です。日本では任意接種で接種率が低いため年間約60万人がかかっていると言われています。症状として最も多い症状は耳下腺の腫れです。約1週間腫れが続きその間は伝染力もあるため登校できません。

おたふくかぜには様々な合併症があります。難聴はほとんどは片耳だけに起こりますが聴神経が壊されてしまうため一生治りません。頻度は0.1%程度と言われています。髄膜炎もおたくふくかぜにかかった子供の1-3%に起こるといわれています。成人男性がかかると睾丸炎が約10-30%の割合で起こるとの報告もあります。

おたふくかぜはワクチンによって予防できますので接種されることをお勧めします。以前は1回接種となっていましたが、現在は日本小児科学会では1歳を過ぎた頃と5-7歳頃の2回の接種を推奨しています。