胃潰瘍?逆流性食道炎?・・・いや「機能性ディスペプシア」かも! -2015年4月30日掲載-

「機能性ディスペプシア」という疾患をご存じでしょうか? 名前だけ聞くとすごく難しそうな疾患に思える方もおられるかと思います。しかし、実は私たち日本人にとってとても身近な疾患なのです。

機能性ディスペプシアとは?

胃潰瘍や逆流性食道炎などの疾患は、内視鏡検査で肉眼的に異常がみつかります。それに対し、特にこれといった肉眼的異常がないのに「胃もたれ」「むかつき」「膨満感」「胃の痛み」などの症状が続くことがあります。これを「機能性ディスペプシア」と言います。原因としては、「胃の動きが悪くなっている」、「胃が過敏になっている」などが考えられます。

正常な胃の働きとは?

通常食事をすると、食べ物は食道を通って胃へ送られ、胃全体の運動によって胃酸と混ぜあわされ、消化されます。その後さらに胃の運動によって十二指腸へ送られます。
この一連の流れの中で、

  • 胃がうまく広がらず、胃に届いた食べ物を長く留めることができない→「膨満感」「胃の痛み」の原因に。
  • 胃に届いた食べ物をうまく十二指腸へ送ることができない→「胃もたれ」の原因に。

このような胃の動きが悪くなる要因には主に「ストレス」、「運動不足」、「不規則な生活」、「偏った食事」、「お酒の飲みすぎ」、「睡眠不足」などが考えられます。言い換えれば、これらを改善することで、症状は治ることが多いということでもあります。

食生活でのポイントは?

  • 食事は1日3回規則正しくとりましょう。胃の働きにもリズムがありますので、食事を抜いたり、深夜に食べたりすると胃のリズムがくるってしまいます。
  • 早食いしたりせず、よく噛み、ゆっくり時間をかけてとりましょう。早食いは胃の負担になります。
  • 食べ過ぎたりせず、腹八分目を心がけましょう。
  • 胃の負担となる、「香辛料」、「脂っこい物」、「飲酒」、「コーヒー」、などの摂取は控えましょう。お酒に含まれるアルコールや、コーヒーに含まれるカフェインは胃粘膜を刺激しますので、とりすぎには注意が必要です。

生活習慣でのポイントは?

  • ストレスは胃の働きを悪くしますので、溜め込まないよう自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
  • 睡眠を十分にとりましょう。胃の負担を和らげるため、休ませてあげる必要があります。
  • 適度な運動をしましょう。運動をするとストレスの解消になり、適度な疲労感が得られ、より良い睡眠に繋がります。

生活習慣を改善しても症状がでる、治療薬はあるの?

従来、薬物治療に関しては以下の2種類の薬が主に使用されています。

  • 「胃もたれ」、「お腹の張り」を感じる方 → 消化管運動機能改善薬
  • 「胃の痛み」、「胃の不快感」を感じる方 → 胃酸の分泌を抑える薬

さらに2013年には、世界で初めて機能性ディスペプシアに適応を持つお薬が発売されました。このお薬は、アコチアミド(商品名:アコファイド)といい、消化管の運動を活発にするアセチルコリンという物質が体の中で分解されるのを抑え、アセチルコリンの量を増やす働きがあります。このお薬を服用するにあたっての注意点としては、1日3回食前に服用しなければならないことです。食前とは食事をとる約30分前のことを指します。食後ではお薬の吸収が食前に比べ約6割まで低下してしまい、本来の効果が得られなくなります。処方された際は、用法に注意してください。

日本人の4人に1人は胃の不調を抱えていると言われる昨今。QOL(生活の質)を低下させないためにも、胃もたれや、胃不快感、お腹の張りなど自覚症状がある方は、一度消化器専門医にご相談されることをお勧めします。

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