夏に向けてペットボトル症候群に注意 -2015年5月29日掲載-

はじめに

近年、温暖化に伴って気温の上昇が著しく、熱中症が増加しています。ニュースでも熱中症が原因での救急搬送や死亡例が報告されており、注意が呼び掛けられています。対策としてはこまめな水分補給が知られていますが、その落とし穴として、ペットボトル症候群があります。

ペットボトル症候群とは

別名:清涼飲料水(ソフトドリンク)ケトーシス※。水分補給を目的として大量に清涼飲料水を繰り返し飲むことで起こる『急性糖尿病』です。

清涼飲料水やスポーツドリンクの多くは飲みやすくするために多くの糖質が含まれます。大量に飲むことで血糖値が上昇(高血糖)し、それにより喉が渇いてさらに飲むという悪循環を繰り返すことで起こります。

※高血糖状態になると、膵臓からインスリンが出にくく(働きにくく)なります。インスリンが働きにくくなると、糖分が取り込まれないため、体内で使うエネルギーの代わりに脂肪が分解されます。その脂肪を分解する過程でケトン体が蓄積し過剰に増えることで、様々な症状をきたします。

症状

  • 喉が渇きやすくなり、飲み物をたくさん飲む(多飲)
  • トイレに行く回数が増える(頻尿)
  • 身体がだるい、ボーっとする(倦怠感)
  • 食べても満腹感が得られない、体重の急激な減少
  • 肩こり
  • 腹痛
  • 嘔吐、下痢
  • 重症になると意識障害(昏睡)

清涼飲料水をよく飲む人で上記の症状があれば、ペットボトル症候群かもしれません。

この症状は、清涼飲料水を好んで飲む習慣のある10代から30代の肥満傾向の男性に多いとされてきましたが、近年40代から50代にも増えています。
糖尿病の方では、他の食品に注意していても、熱中症対策でスポーツドリンクや清涼飲料水を飲むことで血糖コントロールに影響を与える場合もあります。また、糖尿病予備軍(隠れ糖尿病)の方はペットボトル症候群に陥りやすいので注意が必要です。

清涼飲料水・スポーツドリンクの糖分

大量に汗をかいた時に飲むのに適しているスポーツドリンクの多くは、糖質を5%程度含みます(500mLで25g含む換算)。

ゼロカロリーでも糖質ゼロとは限りません(0.5g以下ではノンカロリー表示)。

また、成分表示を確認すると「炭水化物」と表示されていてもそのほとんどが糖分です。

代表的な清涼飲料水の糖分量

商品名 糖質 3gスティックシュガー換算
ポカリスエット(500ml) 約30g 10本
アクエリアス(500ml) 約24g 8本分
DAKARAフレッシュスタート(500ml) 約21g 7本分
コカ・コーラ(500ml) 約57g 19本分
CCレモン(500ml) 約51g 17本分
午後の紅茶レモンティー(500ml) 約35g 12本分

※各公式サイトより炭水化物表示を糖分に置換。

2014年3月に世界保健機構(WHO)は、肥満、虫歯、糖尿病予防として「砂糖は 1日小さじ6杯・多くても1日の総摂取エネルギーの10%未満(5%未満がより効果的)に抑えるべき」という新たなガイドラインを公開しています。小さじ6杯は砂糖25g相当です。

清涼飲料水1本でも超えている量となりますが、健康指針の値です。

対策(注意)

  • スポーツドリンクは2~3倍に希釈して飲む(胃からの排出速度を高めて、腸からの水分や塩分の吸収を良くする上でも有効です)。また、スポーツドリンク以外でもペットボトルのまま飲まずに、コップに小分けして飲むと一気に飲まないので飲み過ぎずにすみます。
  • 冷やしすぎない(冷やしすぎると甘さを感じにくくなり飲む量が増えてしまいます)
  • 糖分の入ってないミネラルウォーターやノンカフェイン(カフェインは利尿作用があるため水分補給に向きません)のお茶などで水分を摂るよう心掛ける。

最後に

5月後半は急に気温や湿度が上昇し、身体が対応しきれず熱中症を引き起こしやすい時期でもあります。さらに暑くなるこれからの季節は、ついつい冷たい飲み物を摂ってしまいます。飲みやすい清涼飲料水やスポーツドリンクは水分代わりにたくさん飲んでしまいがちですが実はたくさんの砂糖が入っています。

熱中症対策としての水分補給は大切ですが、その摂り方を改めて見直してみることも必要です。