糖尿病の三大合併症について -2015年10月31日掲載-

糖尿病が進行すると、血糖値が常に高い状態が持続し血管障害が起きます。特に毛細血管など細い血管が集まる部位に障害を引き起こします(細小血管障害)。中でも目・腎臓・神経は毛細血管が多く、そこに糖が集積して起こるのが網膜症・腎症・神経障害で、この三者を糖尿病性三大合併症といいます。

糖尿病性網膜症

網膜には無数の細い血管が張り巡らされ、その血管から栄養や酸素の供給が行われています。高血糖状態が長く続くと、網膜の細い血管は徐々に傷つき、変形したりつまったりします。血管がつまると網膜のすみずみまで酸素が行き渡らなくなり、網膜が酸素不足に陥り、その結果として新しい血管を生やして酸素不足を補おうとします。新しくできた血管は脆く簡単に出血を起こす原因につながり、一度進展してしまうと治りにくく、しばしば失明の原因となります。自覚症状がでない場合もあるので、まだ見えるから大丈夫という安易な自己判断はせず、定期的に眼科を受診し、眼底検査を受けることをお勧めします。

糖尿病性腎症

腎臓は、血液を濾過して老廃物を尿として体外に排出するとともに、きれいになった血液を体内に戻す働きをします。血液のフィルター機能をもつ腎臓の糸球体は毛細血管の塊でできています。例えるなら細い毛糸の塊のように思って下さい。そんな細い血管が集まる場所に高血糖状態が長く続くと、網膜と同じく血管に糖がつまってくるため、障害や腎臓の細胞膜に変化が起きて濾過がうまく行えません。この状態が糖尿病性腎症といわれるものです。正常時ではタンパク質などは尿に漏れないよう調節されていますが、障害を起こした腎臓では微量のアルブミンなどのタンパク質が尿に漏れだします。

糖尿病性腎症は進行してからでないと自覚症状は現れないため、むくみなどの自覚症状が出現した場合は、かなり進行していることになります。腎機能が悪化し腎不全になると尿毒症(頭痛・吐き気・立ちくらみなど)が出現し、最終的に末期腎不全に至り、人工透析や移植が必要になります。透析導入原因の3割を占める疾患でもあります。

糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害は、しびれや痛み・冷感といった末梢神経障害と、起立性低血圧・排尿障害・胃腸障害などの自律神経障害に分類されます。

網膜症や腎症と同様に、糖尿病性神経障害は高血糖状態の持続によって神経が変性したり、神経に栄養を送る毛細血管の障害で血流が悪くなります。その為、細い神経が走っている手や足先で障害が起こります。症状としては、手足のしびれや痛み・足先の冷感・足底部が皮をかぶった感じ・砂利の上を歩いているような感じといったものがあります。これらの症状は比較的軽いため油断しやすい症状ですが、この段階で適切な治療を受けないと症状が悪化し、全身の筋肉が萎縮し、顔面神経麻痺・便秘や排尿障害・立ちくらみ(起立性低血圧)・胃腸障害などが起こります。

進行すると手足のしびれや痛みがひどく不眠が続いたり、感覚が鈍くなり火傷や靴ずれなどの怪我に気づかず放置したために細菌感染を引き起こし、組織の一部が死んでしまう壊疽(えそ)にまで発展することもあります。ひどくなれば足を切断することにもなります。

こういった状態にならないために、症状が軽いうちから検査を受け、治療を始めることが必要です。