フレイルを知っていますか? -2016年10月31日掲載-

「フレイル」という言葉を耳にされたことはありませんか?
フレイルとは、海外の老年医学用語である「Frailty」のことです。
日本語訳では「虚弱」「衰弱」「老衰」等があてられてきました。しかし、早期発見・適切な対処をすれば健常な状態に戻ることができるため、あえて従来の訳語ではなく、「フレイル」という用語とし、2014年5月から使われるようになりました。

具体的には?

高齢者でよく見られる、加齢に伴う体の働きの変化や、環境へ対応する力の低下により、健康を害しやすくなった状態をさします。フレイルには筋肉・身体機能の低下以外に、疲労感や気力・活力の低下も含まれます。
介護が必要な状態への前段階と言えます。国内のある調査では、地域で生活する高齢者のうち、フレイルの方は11%を超えていました。
筋肉が減り、筋力や身体機能が低下している「サルコペニア」もフレイルの一因となります。
世界有数の超高齢社会であり、今後も高齢者人口が増えていく日本において、高齢者が健康で元気でいることは大切なことです。早く対処すれば健康を回復できる「フレイル」について、多くの人に知ってもらい、健康な生活を送る上で注意してもらうことが望まれています。

どういう人がフレイル?

フレイルの評価基準はいくつかありますが、その内の一つを紹介します。

  1. 体重減少
    6か月で2~3㎏以上の体重減少があった
  2. 筋力低下
    握力が、男性26㎏以下・女性18㎏以下
  3. 疲労感
    わけもなく疲れたような感じがする
  4. 歩行速度
    通常歩行速度が遅い(信号を渡り切れるか不安)
  5. 身体活動
    軽い運動・体操や、定期的な運動・スポーツをしていない(ほとんど外出しない)

上記のうち、該当する項目が 0:健常、1~2:プレフレイル、3以上:フレイル と判断されます。

フレイルになるとどうなる?

  • 身体機能の低下により、病気にかかりやすくなる
  • 風邪をこじらせて肺炎になるなど、病気になった時に悪化しやすく、入院が必要な状態にもなりやすい
  • 転倒して打撲や骨折をしやすく、入院から寝たきりにもなりやすい
  • 入院時などの環境変化に対応できず、自分がどこにいるかわからなくなったり、不安・落ち込み・興奮などの感情がコントロールできなくなったりする

等々・・・

フレイルにならないためには、またなってしまったらどうする?

持病をうまくコントロールする

高血圧や糖尿病、心臓・腎臓・肺の病気、骨の変形等の整形の病気などの慢性的な病気があれば、それをなるべく良い状態に保つことが大切です。
持病のコントロールがうまくいっていないと、フレイルになりやすく、なった場合に悪化もしやすくなってしまいます。

運動と栄養療法

フレイルを知っていますか?

適切な運動により、高齢者でも筋肉量を維持できます。
筋肉量が維持されていると、運動機能の低下を防ぐことができます。具体的には、転ばないで済んだり、疲れにくくなります。
運動療法を行うには、その人に合った適切な運動量で、無理なく行うことが重要です。

また、運動療法で筋肉を維持するためには、その元となる栄養をしっかり摂ることが大切です。栄養が足りない状態で運動療法だけを行うと、筋肉がつかないところか、より栄養状態が悪化してしまいます。
筋肉をつけ、転んだりけがをしたりすることを防止するためには、良質なタンパク質やビタミンD、カルシウムなどを摂り、バランスのよい食事をすることが必要です。

感染症を予防する

高齢者は免疫力が低下していることが多く、風邪・肺炎・インフルエンザ等にかかると重症化しやすいと言われています。重症化した場合は持病が悪化したり、入院となり、そのまま寝たきりになったりすることもあります。
感染症にかからないよう予防すること、インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種をしておくことも必要です。

しっかり食べて体を動かし、いつまでも元気で楽しく生活していきたいものですね。