消毒と手洗い -2019年9月30日掲載-

暑い夏が過ぎ、朝晩が過ごしやすい季節になってきました。皆さんは猛暑の季節は食中毒に注意が必要でしたが、これからの季節はインフルエンザウイルスやノロウイルスなどの多くのウイルス対策が必要となります。

その対策の一環として消毒と手洗いが重要です。しかし、消毒剤は一つのものですべてのウイルスを消毒できるわけではありません。その使い分けが重要となってきます。

手指用アルコール消毒剤

手指用アルコール消毒剤は、インフルエンザウイルスには有効ですが、ノロウイルスにはあまり効果がありません。理由はウイルスの構造にあります。インフルエンザ、ヘルペスウイルスなどは脂肪でできた(脂溶性の)エンベロープという膜に覆われている為、手指用アルコール消毒剤をつけて手を擦り合せるとその膜が壊れ、中のウイルスは不安定となり感染力を失います。
一方、ノロウイルスは元々エンベロープを持たず脂溶性ではない本体がむき出しの状態で存在している為、アルコールにさらされてもウイルスが不安定になりません。しかし全く効果がない訳ではなく、アルコールで手の脂等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指からはがれやすくする効果はあります。

アルコールはある程度の時間、汚れやウイルスと接触しなければ効果がありません。100%のアルコールではすぐに蒸発してしまい、十分な消毒効果が得られません。様々なデータから70%程度のアルコールが良いとされています。また、アルコールは刺激性がある為、傷のある部位への使用は避けるべきです。さらに、頻繁に使用すると手荒れを起こすことがあるので、その場合はグリセリンなど皮膚保護・保湿成分の含まれるものを使用することをおすすめします。

次亜塩素酸ナトリウム

では、ノロウイルスはどのように消毒するかというと、それは次亜塩素酸ナトリウムによるウイルスの除去です。次亜塩素酸ナトリウムは、低濃度で高い殺菌力、不活性作用があり、細菌、真菌(カビ)、ノロウイルス、ロタウイルス等幅広い菌種・ウイルス種に有効です。また脱臭作用もあります。強力な酸化作用でエンベロープをもたないウイルス本体を攻撃します。

使用にあたっての注意点

  • 漂白作用や金属に対して強い腐食作用がある為、色落ちしやすい色物・柄物の繊維製品や、プラスチック・金属を含む物品には使用できません。
  • 手荒れを起こしやすく、タンパク質へ強いダメージを与える為、直接皮膚に接触するような使用はできません。
  • 木材には使用不可ではありませんが、必要最低限の時間にしなければなりません。なぜなら、木の成分(リグニン)との間でも酸化反応が起こり、タンパク質へダメージが加わります。長時間接触すれば木の繊維が毛羽立ち、水などに濡れるとヌルヌルしてしまうからです。繰り返しの消毒で異臭も発生する為、木材には注意して使用します。
  • プラスチック樹脂には使用すると塩素臭・黄ばみの発生がある為、こちらも長時間の接触、高頻度での消毒は避けるべきです。(プラスチック素材の種類によっても使用可、不可があります)。他の漂白剤と混合すると有害な塩素ガスが発生する為、使用には注意が必要です。

主な使用方法は、ドアノブ、カーテン、テーブルなどを次亜塩素酸ナトリウムで浸すようにすることです。ペーパータオルにたっぷり浸み込ませて拭き上げると良いでしょう。

なぜならばノロウイルスは、感染者が触れた物に知らずに触れることで『接触感染』を起こす為です。すぐにウイルスが死滅するわけではないので5分以上浸しておく必要があります。そして5分以上経てば水洗いもしくは水拭きをし、自然乾燥させます。すべての作業は十分な換気をして行ってください。

このように、どんなウイルスを消毒するかによって使用すべき消毒剤は異なります。ウイルスの性質を知って、消毒剤の正しい選択をしてください。

正しい手洗いの方法

消毒と手洗い

最後に手洗いについて説明します。

石けんによる手洗いでは、石けんが手についた脂を溶かすことで、そこにくっついていた汚れ(ウイルス・菌を含む)を浮き上がらせます。そして石けんと混ざりあった汚れ等を水で流すもしくはふき取るところまで徹底することが大切です。そこで、手洗いの正しい方法をご紹介します。

洗う前にチェックして欲しいのが「爪は短く切ってあるか」「時計や指輪は外してあるか」です。

洗い方

  1. 流水で手をしっかり濡らした後、石けんをつけて手の平をよく擦る。
  2. 手の甲を伸ばすように擦る。
  3. 指先・爪の間を念入りに擦る。
  4. 指の間を洗う。
  5. 親指と手のひらをねじり洗う。
  6. 手首も忘れずに洗う。
  7. 手についた石けんを水で丁寧に流す。(ヌルヌルが取れるまで)

これからの季節、正しい手洗いと正しい消毒剤の選択をして、しっかり感染予防をしてください。