骨と血管との関係 -2011年5月19日掲載-

骨には、体を支え、脳や心臓などの大切な臓器を保護するほかに、生命を維持していく上で重要な役割があります。その一つがカルシウムの貯蔵です。カルシウムは骨の材料になるだけでなく、全身の細胞が働くために欠かすことのできないミネラルです。

体内で必要な量が不足すると、背骨や腰骨からカルシウムが血中に流れだして補充します。慢性的なカルシウム不足は、骨の密度を下げ、骨そしょう症を招く危険を高めます。さらに問題なのは、骨から溶け出したカルシウムは、血管を石灰化して動脈硬化を進めてしまいます。

また、歳を重ねると骨を作る力が弱くなります。特に女性は閉経以降、ホルモンの影響で骨密度が急激に低下しやすくなります。また、近年は運動や食生活などの生活習慣が原因で起こる内臓脂肪の関与が大きいことが指摘されています。内臓脂肪が増えると糖尿病や動脈硬化が進行し、心臓病や脳卒中を招くことになります。骨を作る細胞も減少し、骨の新陳代謝が遅くなり、骨そしょう症が進みます。

では内臓脂肪の蓄積を防ぐには、どんな点に気をつければよいのでしょうか?

食生活では、1日3食、栄養バランスのとれた食事が基本。その上でカルシウムや骨作りに役立つマグネシウム、ビタミンDを含む食品を継続的に摂りましょう。また、運動は、骨に圧力をかけることで、骨にカルシウムをしっかり沈着させます。適度な運動は、動脈硬化や肥満の予防・改善にもとても効果的です。

動脈硬化の原因となる血糖値・コレステロール値の上昇や骨そしょう症といった疾患は薬で治療できるようになってきました。しかし、まずは生活習慣の改善と定期的な検診が大切なのではないでしょうか。