息切れを感じたら~そこに潜む重大な病~ -2015年1月30日掲載-

坂道や階段を上がった時に息切れがして苦しいと感じたことはないでしょうか?調子が悪い時に無理をする方はいないように、年のせいで仕方のないことと片付け、身体活動レベルを落としていませんか?そこには、進行してしまってからでは遅く、早期発見・早期治療が重要な「COPD」や「心不全」という危険な病が隠れている可能性があります。思い当たる症状があれば、出来るだけ早いうちに循環器内科あるいは呼吸器内科の医師にご相談ください。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

症状

咳、痰、息切れなど

タバコ煙を主とする有害物質を長期に渡って吸いこむことで生じる肺の炎症性疾患です。炎症の部位により、気道(気管支)を中心とする慢性気管支炎や、酸素の交換を行う肺(肺胞)を中心とする肺気腫に分かれます。咳、痰の量に違いは生じますが、共に空気の通り道に障害が生じるため息切れを起こします。

病気はゆっくりと進行し、元の状態にもどることはありません。しかし早期受診により、禁煙治療を受けると同時に適切な薬物療法、運動療法などを受けることで、病気の進行を遅らせ、症状を軽減することが可能です。

治療薬

長時間作用性抗コリン薬
気道の収縮を緩め、呼吸を楽にします。
長時間作用性β2刺激薬
気管支を拡張し、呼吸を楽にします。
テオフィリン徐放薬
気管支の緊張を緩和する物質を増やして気管を広げ、呼吸を楽にします。
吸入ステロイド
気道の炎症を抑え、呼吸を楽にします。
喀痰(かくたん)調整薬
痰の切れを良くします。

など。

※治療薬のほとんどが吸入製剤であり、特殊なデバイス(装置)に薬が装填されているため、各デバイスの吸入操作を覚える必要があります。薬をもらう際は、薬剤師から使い方をよく聞くようにしてください。

慢性心不全

症状

息切れ、呼吸困難、浮腫(むく)み、咳(就寝時)、疲労感など

心筋梗塞、心筋症、狭心症、弁膜症、不整脈などのさまざまな要因により心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な酸素が送れず息苦しさを感じたり、血流が滞るために肺や末梢の組織に浮腫みが生じたりする疾患です。

狭心症、弁膜症、不整脈については、原因疾患の治療程度に応じて改善しますが、心臓の障害については元にもどることはありません。従って、ほとんどの心不全は長い時間をかけてゆっくりと進行します。重症になればなるほど予後が悪く生存率も低下することから、早期受診によりできるだけ軽症の段階にとどめて、重症化しないように早期から適切な治療を受ける必要があります。

基礎疾患の治療

狭心症
冠動脈形成術・冠動脈バイパス術
弁膜症
弁形成術・置換術
不整脈
カテーテルアブレーション

治療薬

アンジオテンシン阻害薬
縮まった血管を拡げ、心臓の負担を減らします。
利尿薬
尿量を増やし体液量を減少することで、心臓の負担を減らします。
β遮断薬
心臓の動き(拍動)を抑えることで、心臓の負担を減らします。
強心薬
心臓の収縮力を高めます。

など。

※治療薬は病状に応じて変わりますが、大抵は基礎疾患を含めた包括的治療のために、1日あたりに服用する薬の数が多くなる傾向があります。毎日、多くの薬を飲むのは大変かもしれませんが、体調が落ち着き、病気は治ったと自己判断して薬の服用を中断すると、症状を悪化させてしまう恐れがあります。必ず、医師の指示に従って服用するようにしてください。