排尿トラブル ~過活動膀胱(OAB)について~ -2019年12月27日掲載-

「トイレが近い」「尿が漏れてしまう」「夜間何度も起きる」など排尿に関する悩みはありませんか?
最近の調査で、多くの人がこの病気で悩んでいることがわかりました。
40歳以上の男女の8人に1人が過活動膀胱の症状をもっています。排尿トラブル ~過活動膀胱(OAB)について~
過活動膀胱とは、急に起こる我慢できないような強い尿意を主症状とする症候群です。
正常な膀胱は脳からの指令によってコントロールされていますが、過活動膀胱では何らかの原因により膀胱がコントロールを失った状態となり、少量の尿で膀胱が過剰に反応してしまい、我慢できないような強い尿意切迫感が急激におこります。そのため、トイレが近くなったり(昼間頻尿・8回以上)、就寝後何回もトイレに起きたり(夜間頻尿)、強い尿意によりトイレにたどり着くまでに我慢できずに尿が漏れる(切迫性尿失禁)などの症状が出てしまいます。

原因

過活動膀胱には、脳と膀胱(尿道)を結ぶ神経のトラブルで起こる「神経因性」のものと、それ以外の原因で起こる「非神経因性」のものがあります。

神経因性過活動膀胱(神経のトラブルが原因)

脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊椎損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害の後遺症により、脳と膀胱(尿道)の筋肉を結ぶ神経の回路にトラブルが起きると、自分の意志とは関係なく、膀胱が勝手に縮んだり、過敏な動きをしたりするため、膀胱に尿が少ししかたまっていなくても尿を出そうとする過活動膀胱の症状が出ます。

非神経因性過活動膀胱(神経トラブルとは関係ない原因)

特に女性の場合、加齢や出産、女性ホルモンの低下によって、膀胱・子宮・尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなります。そのために、排尿メカニズムがうまく働かなくなり、過活動膀胱の症状が起こります。
また、何らかの原因で膀胱の神経が過敏に働いてしまう場合や、原因が特定できない場合もあります。いくつかの原因が複雑に絡み合っていると考えられていますが、この原因の特定できないものや加齢によるものが、実際に多く存在しています。

治療

1.薬物療法と2.行動療法を併用して行っていきます。

  1. 薬物療法

    抗コリン薬

    膀胱の収縮を抑えて、尿意切迫感を改善する薬です。膀胱の筋肉を緩め、膀胱が勝手に収縮してしまうのを抑えて、尿を溜められるようにします。副作用は、口渇や便秘、物がかすんで見える、めまいなどがあります。閉塞隅角緑内障の方には使用できません。

    β(ベータ)3受容体作動薬

    尿を溜める際に膀胱の広がりを促進する薬で、尿意切迫感を改善します。口渇や便秘などの副作用が少ないといわれています。

  2. 行動療法

    日常生活

    1日の尿量に合わせて過剰な水分を控えたり、カフェインの摂取を控えたりするなど、日常生活を見直すことは頻尿・切迫性尿失禁を改善する上で大切です。
    寒い場所は避け、体を冷やさないようにする、外出時はトイレの場所を確認する、少し早めにトイレに行く、時間に余裕をもって行動するなどの工夫をしましょう。

    膀胱訓練(おしっこを溜める練習)

    尿意をもよおしても、できるだけ我慢し、膀胱の容量を広げる訓練です。排尿日記をつけて自分の排尿パターン(尿量・頻度・間隔)を知り排尿計画を立てましょう。
    まずは、短時間からはじめて、徐々に15-60分単位で排尿間隔を延ばし、最終的には、2-3時間の排尿間隔になるよう訓練します。

    骨盤底筋訓練

    骨盤底筋が緩むと尿道を締める力が弱まり、尿漏れの原因となります。
    骨盤底筋訓練は、骨盤底筋を鍛え、尿漏れを防ぐトレーニングです。
    「仰向けになり、身体の力を抜き、肛門・膣・尿道をギュっと締めます。その後10秒間骨盤底筋を緩めます」この訓練を1回10分、1日数回毎日続けます。
    2-3か月で効果が実感できるようになります。

「年だから仕方がない」「恥ずかしい」とあきらめずに、
主治医(かかりつけ医)や医療機関で、ぜひ一度相談してみてください。