不眠症と睡眠薬 -2020年7月31日掲載-

夏になり気温も上がってくると、なかなか眠れない、寝苦しいと感じることが増えてきます。
他にも明日の試験のことを考えると緊張して眠れない。
旅行先などいつもと環境が違うと眠れない。
明日はいつもより早く起きなければと思っていたら眠れない。
このような不眠経験が、皆様も一度はあるのではないでしょうか。

不眠症について

一時的な不眠は誰にでも起こりうることで、特に心配はいりません。
しかし眠れない日が1週間のうち何日もあったり、眠れないことで日中に倦怠感や疲労感、イライラするなど体調の不調が現れたり、いつもよりミスが多くなるなど生活に支障が現れるようであれば不眠症の可能性があります。
このような不眠症状と日中の不調が3ヶ月以上続くと慢性不眠症と言われており、自然に治ることは難しいと言われています。
自分でできる不眠対処法、例えば昼寝を短めに、カフェインを控える、眠くなってから寝床に行く、毎朝決まった時間に起床するなどもありますが、それでも症状が改善せず、お困りであれば医療機関に相談し、必要であれば薬を使っての治療となります。

睡眠薬について

睡眠薬にはどのような印象をお持ちでしょうか?
強い副作用もあって怖い薬、一度薬を飲むとやめられなくなる、薬を増やしていかないと効かなくなってくる、などあまり良いイメージをお持ちでない方が多いのではないでしょうか。
確かに以前使われていた薬は、徐々に量を増やさなければ薬が効きにくくなる「耐性」や薬を止めにくい「依存」などの問題がありましたが、現在は改良され、今広く使われている薬は安全性も高まっています。

現在使われている睡眠薬はその働きから4種類に分類されます。

  1. ベンゾジアゼピン系睡眠薬:中枢神経のGABA受容体に作用し、不安や緊張を和らげ、筋肉の緊張を取り眠りやすい体内環境にします。
    • 薬の作用時間の長さによって超短時間作用型~長時間作用型に分類され、不眠のタイプにあった薬を選ぶことができます。
    • 筋肉の緊張を取る作用があるので、ふらつきが現れることがあり注意が必要です。
  2. 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン系と同じGABA受容体に作用しますが、選択性が高く催眠作用だけをもたらすと言われており、他の作用(不安を和らげる、筋肉の緊張を取る)は弱くなっています。
    • ベンゾジアゼピン系睡眠薬と比べると依存や耐性が起きにくいと言われています。
    • 作用時間の短い薬が多いです。
  3. メラトニン受容体作動薬:体内時計を調節するホルモンであるメラトニンの受容体に作用して眠気をもたらします。
    • 筋肉の緊張を取る作用がないため高齢者の方にも使いやすい薬です。
    • 飲み合わせの悪い薬があるので、注意が必要です。
    • 小児期の神経発達症に伴う不眠に使用できる小児用の薬剤も最近発売されました。
  4. オレキシン受容体拮抗薬:脳内の覚醒ホルモンであるオレキシンの作用を抑えます。
    高まった覚醒を抑えることにより、睡眠に切り替わることを助け、自然な睡眠へと導く薬です。

    • メラトニン受容体作動薬と同じように筋肉の緊張を取る作用がないため高齢者にも使いやすくなっています。
    • 飲み合わせの悪い薬(一部抗生物質など)があるので注意が必要です。
    • 食事と同時または食直後に服用すると効果の発現が遅くなり、効果が弱くなる可能性があります。

他にもお近くの薬局やドラッグストアで購入できる睡眠改善薬もあります。
睡眠改善薬は慢性的な不眠に使われる睡眠薬とは異なり、一時的な不眠症状に使用するものです。
風邪薬や鼻炎薬を飲むと眠くなることがありますが、その眠くなる成分を使った薬が睡眠改善薬です。
慢性的な不眠には不向きで、短期間の使用に限られています。
2~3回服用しても症状が改善しないようであれば医師や薬剤師にご相談下さい。


不眠症にはなかなか寝付けない入眠障害、途中で目が覚める中途覚醒、朝早く目が覚める早朝覚醒、ぐっすり眠れたという満足感が得られない熟眠障害があります。
また原因もストレスや体の病気、生活のリズムの乱れなど様々です。
薬はその方の不眠のタイプにあったものを、主治医が判断し処方します。
また睡眠時無呼吸症候群などの特殊な睡眠障害には睡眠薬ではなく、それぞれの治療法が用いられることもあります。
自分がこの薬を飲むとよく眠れるからと他の方に譲ると、その方には効きすぎる可能性があります。
また飲み合わせの悪い薬を服用中であれば副作用が強く現れ危険です。
睡眠薬に限らず他の薬もそうですが、薬を他の方から譲り受けたり、他の方に譲り渡さないようにしましょう。
睡眠薬は注意が必要な点もありますが、指示を守って適切に服用すれば安心して使って頂ける薬です。
薬を使い睡眠のリズムが身につけば、医師の指示のもと薬の減量や休薬することもできます。
不眠についてのパンフレットなどもございますので、何かお困りのことがありましたらお気軽にご相談下さい。