紫外線の健康への影響 -2024年8月30日掲載-

紫外線(UV)は波長の長さによって3種類に分類され、波長の短い順に「UV-C」「UV-B」「UV-A」と呼ばれています。

UV-A

波長が長いため皮膚の奥深くまで到達し、真皮にあるコラーゲンなどを破壊することで、コラーゲンを変性させ、気付かない間に肌に悪影響を及ぼし、しわ・たるみなどの原因となります。また、一部は目の奥にある水晶体や網膜まで到達するので、白内障の原因と考えられています。

UV-B

ほとんどは大気圏で吸収されますが一部は地表に到達し、人体に悪影響を及ぼします。肌表面の細胞を傷つけ、炎症を起こすので、日焼けや皮膚ガンやシミの原因になります。
海水浴などでの真っ赤な日焼けの場合、UV-Bの影響が大きいと言われています。

UV-C

大気層で完全に吸収され、地表には到達しません。最も生物に対して破壊力があり、殺菌灯の紫外線に使われています。

健康には不可欠な紫外線

悪影響ばかり注目されがちな紫外線ですが、実はビタミンDを生成する効果もあります。皮膚に「UV-B」が照射されるとビタミンDが皮下でつくられるのです。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、骨の形成や筋力を高める効果が広く知られています。
ビタミンDは食事から摂取できますが、食事だけから必要量を摂るのは容易ではありません。そのため、多くの人は1日に必要ビタミンDの半分以上を紫外線でつくられるビタミンDに依存しているのが現状です。ビタミンD生成に必要な太陽光を浴びる時間は、緯度によって多少変わりますが、最低でも夏であれば7分間、冬であれば90分間ほど必要でしょう。

紫外線による健康被害

急性影響

日差しを浴びて数時間後に皮膚が赤くなることをサンバーンと言い、これは皮膚の血流量増加が原因の赤い日焼けで、数日で消えます。これに対して数日後にメラニン色素が増えることで皮膚が黒い日焼けになることをサンタンと言い、こちらは数週間から数ヶ月続きます。人間の肌の色によって、紫外線による影響は異なります。メラニンが多いほど肌の色は黒くなり、紫外線に対して抵抗性があります。白人では紫外線を浴びても赤くなるだけで、あまり褐色になりません。日本人は赤くなるとその後数日して褐色になります。国際的なスキンタイプでは白人が該当するタイプⅠから黒人が該当するタイプⅥまで6段階に分けられています。日本人はこの基準ではタイプⅡからⅣくらいです。日本人でも色白で、日光にあたると赤くなりやすくて、黒くなりにくい人は紫外線対策が必要です。
紫外線によって皮膚が刺激を受け、かゆみや発疹、水ぶくれなどの症状が現れる光線過敏症も急性影響の一つです。 薬剤性のものを一つ例に挙げると、消炎鎮痛成分のケトプロフェンが含有されている湿布 (モーラステープ®・ミルタックス®など)は光線過敏症をおこしやすいと言われています。外用後に日光にあたるとその場所に一致して赤く腫れあがることがあります。いつもよりひどい症状(水ぶくれ、他の人と比べて著しくひどい日焼け、皮膚が 腫れあがる、など)がみられたら、皮膚科医の診察をうけるようにして下さい。使用後4週間は、天候にかかわらず戸外の活動を避け、日常の外出時は、本剤貼付部を衣服、サポーター等で遮光するなど、紫外線防止の対応が必要となります。

眼への影響

①紫外線角膜炎
強い紫外線を眼に浴びると急性の角膜炎症を起こします。スキー場など紫外線の反射の強い場所で起きる「雪目」は良く知られています。48時間以内に治ります。
②翼状片
眼球結膜(白目)が翼状に角膜(黒目)に侵入する線維性の増殖組織で、瞳孔近くまで進展すると視力障害をきたします。通常は30歳代以降に発症し、進行は早くありません。農業、漁業従事者など戸外での活動時間が長い人に多発し、紫外線ばく露を含めた外的刺激がその発症に関係すると考えられています。治療は外科的な切除を行いますが、2~7%の人は再発し、再手術が必要になります。
③白内障
レンズの役割を担う水晶体が濁って網膜まで光が届かなくなり、見え方の質が低下します。初期には水晶体が硬くなるため老眼が進行し、濁りが強くなると視力が低下し、進行すると失明に至ります。抜本的な治療はレンズ交換手術です。

健康への悪影響を防ぐために

①紫外線をできるだけ浴びない
紫外線の強い正午前後の外出はできるだけ避けましょう。10時から14時までに一日量の60%以上が放射されると言われています。曇りの日も紫外線は強く、薄い雲ではUV-Bの80%以上が透過すると言われています。また紫外線は、一年のうちでは春先から急激に増加し7月頃がピークになります。ハイキングなど標高の高い場所や緯度が低い地域ではより注意が必要です。標高が1000m上昇するとUV-Bは10~12%増加すると言われています。生涯を通し、浴びる紫外線量の半分は、思春期までに浴びると言われています。 紫外線へのガードは若いうちから 心がける必要があります。
②体を慣らす
強い紫外線を急に浴びるではなく、最初の日は日光浴を少なめにして、次の日は少し多くして、 徐々に皮膚を慣らしていくのがポイントです。こうすることによってメラニン色素が作られ、ひどい日焼けから皮膚を守ってくれます。
③日傘を使う、帽子をかぶる、衣服で覆う
とにかく紫外線をさえぎり身体を覆うのが一番効果的です。つばの広い帽子はお勧めです。衣類は厚手で色が濃いほど紫外線の防護に役立ちます。
④紫外線カット機能を持つサングラスをかける
サングラスや紫外線カット眼鏡を適切に使用すると、眼へのばく露を90%カットすることが出来ます。
一般にガラスの眼鏡はUV-Bをカットしますが、プラスチックの場合は“UVカット”表示のあるものを選びましょう。
⑤日焼け止めを使う
紫外線の健康への影響
<日焼け止めの効果を示す指標>
日焼け止めはPA分類とSPF値の表示があります。PAは主としてUVAを防ぐ指標で、SPFは主としてUVBを防ぐ指標となります。SPFやPAが高いものは、洗っても落ちにくいなど、肌への負担も比例して大きくなります。使用シーンや目的によって、適した日焼け止めを使い分けることが大切です。
また、日焼け止めの使用量が少ないと十分な効果を発揮できません。せっかくの日焼け止めも意味がなくなってしまいます。定められた使用量をきちんと守って使いましょう。一度にたくさん塗ると、べたつき、塗りムラができやすいので、顔などに塗る場合は「2回に分けて塗る」と十分な量をしっかりと塗ることができます。
紫外線から徹底的に肌を守りたいなら、2時間おきにこまめに塗り直し、紫外線防御効果をしっかり持続させましょう。