判決、環境政策に影響=「経済成長の在り方問われた」―四日市ぜんそく

四日市ぜんそくをめぐり、企業6社の責任を認めた1972年7月の判決は、経済成長を優先した地域開発の在り方に一石を投じ、その後の公害対策や環境政策にも大きな影響を与えた。住民被害をいち早く調査し、原告側の証人となった宮本憲一大阪市立大名誉教授(92)は「高度経済成長の先端だったコンビナート企業を相手にした四日市公害訴訟は、経済成長がどうあるべきかを問うた裁判でもあった」と話す。

判決は、健康被害とばい煙の因果関係を認定した上で、企業6社の共同不法行為の成立や、立地上・操業上の過失を認めた。

法理論の面で弁護団を支援した森嶌昭夫名古屋大名誉教授(87)は「新しい理屈を立てながら、裁判で四日市を変えることが、日本の将来にとって大事なことだった」と振り返る。判決は74年施行の公害健康被害補償法にも影響を与えるなど、「裁判を契機に政策も変わっていった」と語る。

宮本名誉教授は「地域開発は住民の所得だけではなく、福祉を向上させるものでなくてはならない」と指摘。「企業は地元の人たちと十分に対話しながら、地域の環境や利益を大切にしてほしい」と話した。

時事通信社

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